SBIホールディングス×サイフューズ対談

2025年4月〜10月に開催された大阪・関西万博。
その巨大な舞台で、「未来の医療」の姿を独自の視点から提示し、ひときわ来場者を惹きつけ大人気を博した大阪ヘルスケアパビリオン。
そのパビリオンの目玉の1つとなった「ミライの都市」に位置する「SBI ホールディングスブース-街のネオホスピタル-(以下、SBIブース)」に出展協力したスタートアップ企業「サイフューズ」。一見すると、規模も事業領域もアプローチも異なる両者であるが、医療の進化が社会やヒトの在り方を大きく変えるという確かな未来像を見据えている。
それぞれが万博に込めた想い、出展の意義は何か。
そして、両者が描く「これからの医療」と「未来社会」とはどのようなものなのか。
本対談では、壮大なビジョンと最先端テクノロジーを携えて、万博という大舞台に立った両者に、未来医療への想いや展望を語っていただいた。

第1部

「未来の診察室」で描いた“日常に医療が溶け込む社会”~その鍵となるものとは~

「未来の診察室」の展示のコンセプトについて教えてください。

SBI(小松):
今回SBIブースでは、「何歳になっても元気に過ごせる未来」をテーマに、その未来を実現するための要素として、「がん治療」「再生医療」「バイオデジタルツイン」「成長老化コントロール」という4つの医療技術に焦点をあてて紹介しました。
健康の予測・疾患の未然予防から治療、そして生活の質の向上まで、一人ひとりの“健康”を支える「未来の病院」のイメージのもと、実際に来場者に入ってもらえる「未来の診察室」の製作を行いました。

展示内容について、当初の構想から大きく変更があったと伺いました。

SBI(小松):
実は、当初予定していたコンセプトが、万博開幕まであと2年というタイミングで大きく見直されることになりました。
当初は、ロボット手術や再生医療などを中心とした企画を準備していたのですが、いざ形にしてみると「いま現在存在している医療の延長線に見えてしまう」「万博らしい“最先端性”に欠ける」などの指摘を受けました。
万博という場は来場者に“未来を提示する場所”。だからこそ、医療の明るい未来を直感的に感じられるコンセプトを再考することになりました。

SBI(井藤):
「SBIグループの投資先企業の医療技術を集結させることで、どのような未来を提示できるのか」という問いに立ち戻り、イチからコンセプトを再定義した結果、生まれたのが“何歳になっても元気に過ごせる未来”というテーマです。

サイフューズから見たSBIブースの印象は?

CYF(三條):
医療は本来、日常生活や人生と切り離せないものです。せっかくの万博の機会でしたので、技術の進歩で人々の身近になった医療が、より日常生活に溶け込んでいるような未来社会を表現できたら、大変意義深い体験になるなと思っていました。その意味で「がん治療」「再生医療」「バイオデジタルツイン」「成長老化コントロール」という4つの技術テーマを伺ったとき、「未来の医療」を来場者が直感的に理解できる構成だと感じました。「未来の診察室」全体のコンセプトやテーマは、サイフューズが日々向き合っている再生医療の未来像とも大きく重なる部分があり、サイフューズが大切にしたいと考えている本質をしっかりとらえた内容で、とても共感しましたし。

今回の展示は“没入感”がとても印象的でしたが、当初からの狙いのとおりでしたか?

SBI(井藤):
当初は“技術を並べる”だけの案やどう並べるかの展示方法を検討していたのですが、議論を重ねる中で、「未来の診察室」という形が来場者に展示コンセプトが最も伝わりやすいという結論になりました。
“未来の診察室”を感じてもらうためにはなにが必要か?を常に念頭に置きながら展示造作を検討する上で、技術の先進性だけでなく、それがどのように人々の生活に還元されるのかといったリアリティやストーリー性も重視し、空間造作や鑑賞動線にもかなりこだわりました。その甲斐あって没入感を演出できたのではないかと思います。

CYF(三條):
確かに、来場者は実際に稼働している「未来の診察室」を見学しているイメージで、例えば医師視点でも患者視点でも体験することができる設計になっていたのは、非常に未来の医療像を実践的に表現されていると感じました。
また、診察から治療選択肢の提示までの見せ方、伝え方がすごく丁寧で、“未来の医療のかたち”が来場者に直感的に伝わる展示だと感じましたし、現在の再生医療技術はどうしても一般的には難解な印象を持たれやすいのですが、「未来の診察室」で実際に提供されている「再生医療」は複雑な未来医療ではなく、身近な医療として表現されていました。医師や患者が「バイオ3Dプリンター」から生み出される治療選択肢を実際に見て知った上で診察を受けたり、日常生活でPHR(パーソナルヘルスケアレコード)が活用されていたり、個々人に最適化された健康管理が身近になっている未来を体感できる展示は、特に印象的でした。

展示を通して、来場者にどのようなメッセージを伝えたいと考えていましたか?

SBI(井藤):
来場者には、特に『未来の自分』をイメージしてほしいという思いが強くありました。2050年の大阪を舞台に、自分の健康や生活をどう設計できるかを考えながらブースを回っていただくことで、自己実現への意識を変えてもらえることを目指しました。サイフューズさんの『2050年版のバイオ3Dプリンター』をはじめとする最先端医療技術の展示も、そのメッセージを支える重要な要素でした。

SBI(小松):
医療の進歩は日進月歩ではありますが、今回SBIブースで表現した未来は決して遠い未来の話ではないということ、そして一人ひとりが「いのち」や「健康」をより身近に、自分事として捉えていくことが社会全体の健康寿命の延伸に繋がるという未来像を感じ取っていただけていたら嬉しいです。

「健康」をより身近に感じられる未来というのは、具体的にどのような姿をイメージしているのでしょうか。

CYF(三條):
従来の「病気になってはじめて病院に行って治療を受ける」という直線的な導線ではなく、日常生活の中で健康状態がリアルタイムで解析され、予防や健康支援が恒常的に行われる形ですかね。
たとえば、朝起きた瞬間から、身につけたデバイスが睡眠の質や血糖値など血液・血流の質、体温変動など体調をリアルタイム解析し、その後の食事や活動をAIが提案してくれる。“医療行為を受けている”という意識がなくとも、自然に健康に向けた活動が始まっているような未来ですね。 今回の「未来の診察室」がある「ミライの都市」では、そうした日常生活に溶け込んだ未来の医療の姿が、AIによる疾患予測や薬の効果シミュレーション、ドローンでの処方自動配送、ブロックチェーンによる決済まで含めた、未来都市の生活の流れとともに自然に描かれていたのも印象的でした。

SBI(井藤):
そうですね、医療の未来は医療単独の進化ではなく、都市機能や交通、金融、教育と密接に結びつくべきだと思います。
PHR(パーソナルヘルスレコード)が街全体の血流のように行き渡っている。交通網や金融ネットワークが、健康データを媒介しながら医療を支えるインフラとして動く。そんな未来像を来場者に分かりやすく感じてもらいたいと考えました。そしてこれは単なる理想論ではなく、制度面の整備や運用の工夫さえできれば、十分に実現可能な未来像だと考えています。

CYF(三條):
医療が交通、金融、教育など、社会全体と密接に結び付いて進化していくとするとひょっとしたら「医療=病院に行って受ける治療」という現在の常識も変化していくかもしれませんよね。未来では、学校でも職場でも自宅でも、どこでも存在している「医療」のような。そうなったとしたら、病院自体にも、“毎日寄りたい場所“や“行きたい時にふらっと立ち寄る場所”などの今は無い新たなイメージが出てくるかもしれません。 未来では、例えば、家庭や職場で健康管理が完結する“分散型医療”が実現しているような気がします。ヘルスケアパビリオンでも、未来のコンビニや美容室など、かならずしも病院だけではない様々な未来像を体験できるようにされていましたよね。

医療と生活の融合の鍵となる技術とは何だと思いますか?

SBI(井藤):
今後の医療の発展を考えると、AI・データサイエンスの進化は不可欠だと思います。疾患予測、創薬、治療選択、生活支援……どこを切り取ってもデータが要になります。特にPHRを横断的に扱う基盤づくり、AIの評価・承認制度、データサイエンスと医療現場の橋渡しができる人材育成などは欠かせません。

SBI(小松):
医療が生活に溶け込むほど、制度面のアップデートも求められます。データ連携の標準化、個人情報保護といったプライバシー・セキュリティを守る仕組みも重要です。安心して使えるシステムがなければ、どんなに技術が進んでも普及しませんしね。制度改革など、技術と制度の両面での整備が必要になってくるのだと思います。

技術革新が進むと、医療従事者だけでなく患者の役割や在り方も変わりそうですね。

CYF(三條):
そうですね。患者自身も、「治療」という形で医療の提供を受ける側というだけでなく、日常のデータを軸に自身の「健康」を把握し、データ解析やAIと連携した医療従事者とともに、予防や治療に参加する場面も増えるのかもしれません。テクノロジーの力で生み出された技術革新が従来の役割や在り方に良い変革をもたらす「未来」は、サイフューズが目指す1つの形です。

SBI(井藤):
先ほど申し上げた通り、医療の未来はテクノロジーだけで進化するのではありません。人間の生活と意識の相互作用で初めて価値が生まれるものだと思います。加えて、医療技術の進化と共に今後ますます治療の選択肢が増えていくことが予想される中で、それらを正しく理解し、自分に合うものを選定していくといった各人の医療リテラシーの向上も重要ですよね。

CYF(三條):
その通りですね。技術だけが進んでも、人々が健康を自分ごととして捉えなければ、未来は訪れません。未来の医療は、技術と社会、人々の意識が一体となって初めて価値を生む。そして、再生医療のような現在では先端と呼ばれる医療も、必ずしも日常から縁遠いものではなく、将来には、当たり前の日常生活の一部を構成する医療であるという意識を社会全体で育むことも重要ですね。万博で体感できた未来の医療は、まだ先の話ではなく、私たち一人ひとりが関わることで現実になるものだと思います。

【話者】SBIホールディングス株式会社 万博推進室 アシスタントマネジャー 小松/井藤
    株式会社サイフューズ 取締役 経営管理部長 三條

第2部へ続く